オリンピックを漢字ではこう書くそうだ。
始まるまではさほど興味もなく、開会式がいつかも知らなかった有様だが
連日の熱い報道につられて見るようになった。
偽物大国の名に相応しく、開会式で歌った少女は口パクだったとか
花火はCGだったとか、競技以外の話題にも事欠かない北京だが、
やはり一流の選手たちが全力を振り絞って挑む姿は素晴らしいと思う。
競技そのものももちろん素晴らしいが、ここまでに至る過程や本人の
心情などを知ると、より感情移入して応援したくなる。
そんな風にして今回特に心に強く焼き付いたのが、男子体操の冨田選手。
・・・イケメンだからじゃないですよ。いやそれもあるか。笑
各メディアどれをとっても冨田選手を絶賛しているのだ。
選手に対して自国のメディアが少々大げさ過ぎるくらい好意的に伝えるのは
仕方ないが、冨田選手に関しては好意度が違う。
アテネ五輪団体戦で金メダルを獲り2連覇への期待のかかった重圧を背負って
チームを引っ張ってきたキャプテン。
採点方法が変わっても自らの目指す「美しい体操」に拘り、事実「世界一美しい」
と讃えられる完璧な演技。
寡黙だが誰より長く練習場に居て、後輩にやるべきことを「背中で語る」。
北京での団体戦は中国に得点差で水をあけられ、メダルの懸かった決勝戦で
吊り輪から落ちた。それでも銀メダルを獲った。
読売新聞の記者はその日の夕刊で、
「〜団体の連覇は逃したが、立派な銀メダルだ。疲労の蓄積で自分の調整に
影響が出ることを覚悟し奮闘したキャプテンを、責められる者など存在しない」
と書いた。
鉄棒の個人戦で得点が伸びず六位に終わった時、実況のアナウンサーは
「冨田、メダルには届きませんでしたが、もう充分です!」と彼が重圧から
解放されることを喜んだ。
私も個人戦の頃にはすっかり冨田選手のファンになっていて、全ての競技を
終わってのインタビューで普段無口な彼が微笑みながら、
「幸せなオリンピックでした」と言うのを聞いて、思わず涙が出た。
そんなオリンピックもあと少し。
また心を揺さぶられるような感動に出会いたいと思う。